近年、学びの場における環境整備の重要性が増しています。生徒が快適に過ごせる空間づくりは、学習意欲や集中力にも大きな影響を与える要素のひとつです。また、学校は地域の防災拠点としての役割も担っており、様々な場面で過ごしやすい空間づくりが求められます。
そうした背景の中で、空調設備の整備は避けて通れない課題です。今回の記事では、公立学校のエアコン設置率をはじめ、教室・体育館に設置される主なエアコンの種類・タイプ、設備の寿命、適切な交換時期、選ぶ際のポイント・注意点などを解説します。
また、おすすめの空調システムとして「エコウィンHYBRID」も紹介しますので、ご興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
公立学校のエアコン設置率は?
文部科学省が令和6年9月1日時点で実施した調査によると、公立小中学校等における空調設備の設置率は着実に向上しており、特に普通教室では全国的に整備が進んでいる状況です。
普通教室は99.1%が設置済み
公立の小学校・中学校・義務教育学校などにおける普通教室のエアコン設置率は99.1%と、ほぼすべての教室に冷房設備が整備されています。前回(令和4年度)の95.7%から3.4%上昇しており、快適な学習環境の実現に向けて各自治体が積極的に取り組んでいる様子がうかがえます。
特別教室では約7割が整備済み
音楽室・理科室・家庭科室などの特別教室においても設置が進んでおり、設置率は68.7%(前回63.3%)。5.4%の増加が見られています。
体育館は設置率がまだ低水準
一方、体育館の空調整備は依然として遅れており、設置率は22.1%にとどまっています。ただし前回の15.3%から6.8%増加しており、設置に向けた動きは確実に進行中です。
学校施設環境改善交付金について
文部科学省が公立学校における学習環境の質向上を目的に設けた補助制度があります。教室や理科室、体育館、給食室などすべての部屋における空調設備の設置・更新工事にかかる費用の一部を国が支援します。算定割合は基本的に1/3ですが、財政力に応じて2/7となる場合もあり、体育館については令和7年度までは1/2の補助率が適用されます。
補助対象は小中学校、義務教育学校、特別支援学校、幼稚園など。対象となる工事費の範囲は400万円から7,000万円までで、断熱性のない体育館では断熱工事費も含め補助対象となるなど、実用性の高い制度です。
参考:公立学校施設における空調(冷房)設備の設置状況調査を実施
体育館のエアコンの必要性
体育館は学校施設の中でも特に広い空間でありながら、これまで空調整備が進みにくかった領域でもあります。しかしながら、教育現場や地域社会での役割が多様化する中で、エアコンの導入は単なる「快適さ」の実現にとどまらず、安全性や公共性の観点からも重要性を増しています。
以下で、体育館へ空調を導入すべき主な理由を見ていきましょう。
猛暑下での授業・活動の安全確保
体育の授業や部活動、スポーツ大会など多目的に利用される体育館は、構造上、断熱性や換気性が十分ではなく、夏季は著しく高温・多湿になります。近年の猛暑の影響により、室温が危険レベルに達するケースも増えており、その場合、生徒や教職員の熱中症リスクが非常に高くなります。
災害時の避難所としての機能強化
学校の体育館は、地震や風水害時の避難所として指定されていることも多く、災害時には、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層の避難者が集まるため、エアコンによる室温の適切な管理が求められます。暑さや寒さを和らげることで、避難者の健康リスクや体調不良を防ぎ、より安心・安全な避難生活が可能になります。
施設稼働率の向上
体育館は入学式・卒業式といった学校行事だけでなく、地域のイベントが実施されたり一般市民が利用したりする空間でもあります。多目的な集会・活動の場としても活用されており、快適な室内環境の整備は行事全体の質の向上にもつながります。空調導入により、通年での利用がしやすくなり、施設稼働率の向上といった効果も期待できます。
教室・体育館に設置されるエアコンの種類・タイプは?
学校に設置されるエアコンは、空間の広さや、換気・静音性能などを考慮して選定されます。
特に教室と体育館では求められる性能や設置環境が異なるため、それぞれに適した空調方式や機器が導入されています。
教室
一般的な普通教室には、壁掛け型や天井埋込型のパッケージエアコンが多く使用されています。比較的狭い空間に対応でき、設置コストやメンテナンス性に優れているため、多くの学校で採用されています。壁掛け型エアコンは設置が容易で、更新工事にも対応しやすいのが利点です。一方、天井埋込型は天井にスッキリと収まり、風の分散性に優れているため、教室内の温度ムラを抑えやすいです。
また、天井の構造や設備スペースの関係で埋込設置が難しい場合には、天井吊型や床置型が選択されることもあります。天井吊型は広範囲に風を届けられるうえ、床面を有効活用できるのが特徴です。床置型は壁際やコーナーに設置でき、設置の自由度が高く、必要に応じて移動や増設が可能な点がメリットです。
体育館
体育館では、広い空間に対応できる天吊り型のエアコンや、スポット冷暖房方式、ダクト空調システムなどが用いられます。特に高天井空間では、暖気が上昇しやすいため、サーキュレーターや大型ファンと併用することで空調効率を高める設計が重要です。風の循環を促し、体感温度のばらつきを抑えることで、競技や集会など多目的な利用に対応した快適な環境づくりが可能になります。
広い面積をカバーするには冷暖気の偏りを防ぐ工夫も必要で、エリア別制御による温度管理や、床面近くに空調吹き出し口を設ける設計も採用されています。天吊り型パッケージエアコンは、パワフルな送風で体育館全体に空調を届けられるだけでなく、設置位置を高所に分散させることで生徒の安全性も確保できます。
エアコン設備の寿命と交換時期
学校などの大型施設に導入されているエアコン設備の一般的な寿命は、おおよそ10年から15年程度です。使用頻度や設置環境、定期的なメンテナンスの有無によって前後しますが、10年を超えると経年劣化による不具合や冷暖房能力の低下が見られやすくなります。また、最新機種に比べてエネルギー効率が劣るため、古い機器を使用し続けることで電気代などのランニングコストがかさむといったデメリットもあります。
特に学校では、常に安全かつ快適な学習環境を維持することが求められるため、計画的な設備更新が重要です。冷暖房の効きが悪い、異音や異臭がするといった兆候があれば、交換のタイミングといえるでしょう。定期点検とともに、交換計画を立てておくことが望まれます。
学校に設置するエアコンを選ぶ際のポイント・注意点
学校施設におけるエアコンの選定は、機種の種類や出力だけでなく、設置環境や維持管理のしやすさなど、実運用を見据えた配慮が求められます。公共施設である学校では、生徒の健康や快適性を守ると同時に、維持管理コストや環境負荷にも配慮した選定が必要です。
以下で教室・体育館それぞれの視点から、実際に選ぶ際の具体的なポイント・注意点を解説します。
教室
まず、空間の広さや構造に見合ったサイズ・能力の機種を選定することが基本です。例えば、1教室あたりの面積(およそ60〜80㎡)を想定し、十分な冷暖房能力(おおむね4~5馬力程度)の業務用エアコンが求められます。天井高や日射条件によっても必要能力が変わるため、実際の設置環境に即した計算が必要です。
また、学習環境としての快適性を保つためには、冷風や温風が生徒に直接当たらない風向調整機能や、静音性の高い機種が望ましいです。さらに、CO₂濃度の自動検知による換気制御や、花粉・ウイルス対策の空気清浄機能、湿度調整機能なども、より高度な学習環境の整備に有効です。省エネ性やメンテナンスのしやすさも考慮し、長期的な運用コストとのバランスを見ながら選定することが重要です。
体育館
体育館の場合、耐久性と安全性の確保が何より大切です。激しい運動やボールの衝突が想定される空間では、衝撃に強い設計や保護カバー付き機種などの安全対策が重要になります。また、床面に直風が当たりにくい設計や、空調機器の設置位置にも十分な配慮が求められます。
加えて、イベントや集会、災害時の避難所としての利用も考慮すると、短時間で空調が効く起動性の高さや、大人数でも快適に過ごせるよう温度ムラの発生を抑える設計が求められます。定期点検やフィルター清掃のしやすさ、設置工事の自由度や更新時の対応のしやすさといった、運用面でのメンテナンス性も重要な要素です。
体育館は構造が特殊なため、天井の高さや建物の断熱性能、外気取り入れの導線、換気量などの要件を総合的に検討し、それらに対応した空調機器の選定が不可欠です。
学校におすすめの輻射式冷暖房システム「エコウィンHYBRID」
輻射の仕組みを活用した「エコウィンHYBRID」は、その有効性と安全性から、学校施設への導入が進んでいる空調システムです。
ここでは、その特徴と仕組み、製品ラインナップ、導入事例をご紹介します。
特徴・仕組み
学校の教室や体育館において、快適な学習・運動環境を維持しながら省エネも実現できる空調システムが「エコウィンHYBRID」です。通常のエアコンと組み合わせて使う輻射式冷暖房システムで、遠赤外線を用いて空気ではなく人や物体そのものを温めたり冷やしたりする仕組みが特徴です。
夏は木陰にいるような涼しさ、冬は太陽の陽だまりのようなぬくもりを感じられ、冷暖房の効き過ぎによる不快感を軽減できます。空気を強くかき回すことがないため、ほこりや花粉の舞い上がりも抑えられ、静かで落ち着いた学習空間を維持できるのも大きな魅力です。
既存のエアコンを弱運転で併用するだけで、体感温度を2~4℃改善できるため、夏は高め、冬は低めの設定温度でも快適に過ごせます。その結果、光熱費を削減しながら、快適な室温管理が可能になります。
安全性にも優れており、低温輻射(45~50℃)によってやけどのリスクが低く、角のない円筒形の発熱部により接触時にケガをするリスクも低いです。生徒が多く集まる教室や体育館をはじめ、保育園や特別支援学校でも安心して導入できるシステムです。
「エコウィンHYBRID」にご興味がございましたらぜひ詳細をご確認ください。
製品ラインナップ
SCREEN(スクリーンタイプ)
最大サイズとなるスクリーンタイプは、約24畳程度の広さに対応。高さ2350mmと天井近くまで届く縦長設計で、効率的な輻射熱の広がりが期待できます。重量は約40kg、カラーはホワイトとダークブロンズの2色展開。オプションとしてデザインパネル、アルミフレーム枠、ドレンポンプが用意されています。大型の空間や開放感のある場所に適したスタイルです。
WALL(ウォールタイプ)
スクリーンタイプよりもコンパクトで、約12畳程度の空間に適したモデルがウォールタイプです。高さは1250mm、重量は約30kgと扱いやすく、壁面設置にも向いています。カラーはホワイトとダークブロンズ。スクリーンタイプと同様に、デザインパネルやアルミフレーム枠、ドレンポンプがオプションとして用意されており、さらに反射板の追加も可能です。省スペースで取り入れたい場合に最適です。
LOWBOY(ローボーイタイプ)
高さを抑えたローボーイタイプは、窓下や低位置への設置に適しており、室内のレイアウト自由度が高い点が特徴です。Sサイズ(約12畳)とLサイズ(約20畳)の2種類があり、それぞれ23.5kg、34kgと軽量設計。幅はSが1600mm、Lが2200mmで、カラーはホワイト、ブラック、ステンレスカラーの3色が揃っています。オプションはドレンポンプのみですが、洗練された外観と機能性を兼ね備えたタイプです。
導入事例
佐賀県 小城市中学校教室
佐賀県小城市では、市内4校の中学校において、計27教室に「エコウィン HYBRID」LOWBOYタイプが導入されました。導入にあたっては、限られた予算の中でのコストパフォーマンスの高さや、イニシャルコスト・ランニングコストの両面での優位性が評価され、採用に至りました。
福岡県 下広川小学校体育館
福岡県内にある小学校の体育館(754㎡)にSCREENタイプを16台設置した事例です。木材を活かした建物の雰囲気と調和しつつ、安定した温熱環境を実現しています。
冷暖房による温度ムラの解消や底冷えの緩和など、大空間ならではの課題にも対応しています。
東京都 東京共育学園高等部
東京都北区滝野川にある東京共育学園高等部では、より安心して過ごせる空間を目指し、SCREENタイプを8台(6教室+1ホール)導入。空調だけでなく、教室壁には漆喰を採用し、調湿・消臭・除菌効果もプラス。まるでもう一つの我が家のような、あたたかくやさしい学びの環境が整備されました。
千葉県 八街市立某小学校 保健室
千葉県内にある小学校の保健室では、生徒の体調不良時や休養中の快適性を確保するため、LOWBOYパネルを2台導入。設置されたのはベッドスペースと教員デスク側の2か所です。
保健室のように、静粛性や体への刺激を最小限に抑える空調が求められる環境において、適した設備です。体感温度のムラを抑え、冷えすぎ・暑すぎのない心地良い空間が保たれます。
学校に設置するエアコンを選ぶ場合には
近年、全国の学校では教室へのエアコン設置が大きく進み、多くの公立小中学校で完備されています。一方で、体育館への空調設備はまだまだ未整備のケースが多く、広い空間ゆえの設置コストや冷暖房効率の課題もあり、導入が進みにくい現状があります。
しかし、体育館は授業や部活動だけでなく、イベント開催や災害時の避難所としても使われるため、熱中症リスクや衛生環境の観点からも空調整備は急務といえます。教室・体育館それぞれの特性に合った空調機器・設備を選定し、快適で安全な学習・活動環境を整備することが重要です。
その点で、輻射と対流を組み合わせた「エコウィンHYBRID」は、静音性・省エネ性・快適性を兼ね備えた空調システムとして非常に有効です。学校への導入をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。